理不尽!!涙の遊園地
みー&すーと暮らし始めて2日目の夜。
「ここらへん案内してほしいなぁー」と言った私に、猫たちがピピッと反応した。
「何がしたい?近くだと江ノ島水族館かな」
「2回分の料金で年間パスポート買えるってボッタクリだからいや」
「あ、横浜に遊園地ある!」
そうだ、みんなでコスモワールド遊園地へ出かけよう!!
それまで畳に布団でだらだらしていた3匹の空気が一変、早起きのためにアラームを掛け夢の世界へ突撃。
午前中は漁港でイナダを買い、みーちゃんに教わりながら捌いた(自分用の柳と小出刃包丁を持ってる12歳)。
お昼は豪華なお刺身キムチ丼、生魚が食べられないすーちゃんには甘いスクランブルエッグ。
腹ごしらえも済んで、いざ遊園地へ出発!というとき、事件は起こる。
「てめぇふざけんじゃねぇよ!!!!」
「なんでいつもそうやって言うの!!バカバカとかさぁ、みーちゃんのせいで行く気なくす!!」
発端は、YouTubeに夢中で出かける準備が終わらなかったすーちゃん。
みーちゃんが再三声をかけるも上の空で、バスが出る時間を過ぎてもあれがないこれがないと家の中から出て来ず。
痺れを切らしたみーちゃん、全力走り込みパンチ。
「人のせいにしてんじゃねぇ!!」
鏡が割れる!と言いながらも取っ組み合いの大バトル。
私はおやまぁとソファーに腰を下ろし、白湯を飲みながら観戦(喫茶店してるからおしゃれな茶葉がたくさんだけど淹れ方が分からない)。
すーちゃんが「もーいい!!」と布団に隠れ、みーちゃんは部屋の隅で丸まって、両者大号泣。
「くぅちゃん楽しみにしてくれてたのに、こんなことになってごめんね」と大粒の涙を流すみーちゃん(感激!計画立ててくれてありがとう!)。
「ねぇ、すー行こうよ。殴ったのは悪かったよ」
「みーちゃんがお腹蹴ったからまた痛くなった!行けないのみーちゃんのせいだからね!!」
一時間経ってもすーちゃんの怒りは一向に収まらず、さすがにイラッとした私も布団を引っぺがし参戦。
「本当に痛いなら病院行くよ!!準備出来なかったの悪かったなでいいんじゃないの?それから殴らないでって怒りなよ!」
「うるさい!!黙れ!!病院とか余計なお世話なんだよ!!」
もう二度と楽しい気分になれない絶対行かない、とすーちゃん。
こんなやつと一緒に暮らせないとみーちゃん。
病院まだ開かないしなぁとソファーにごろんする私。
「…くぅちゃん、分数のかけ算ってどうやるんだっけ?」
テクニカル担当のみーちゃん、突如iPadで算数を始める。
「かけ算?ひっくり返してかけるのは割り算だったよね、隣同士かけるんだっけな?」
「くぅちゃん、答えマイナスになっちゃったよ!」
「まじで」
「ちょっとくぅちゃん、自分でやるわ」
「うん、すまん(隣同士で足すんだったっけ…?)」
「ねぇねぇ、遊園地行かないの??」
………!!!!?
布団の中から、ちりりんと鈴のような声が聞こえる。
「すー、まだ諦めてないよ」
!!!!!!!!
『じゃあ、行こうぜーーー!!!』
事態は突然動き出す。
今だ!それ行け遊園地!!
一瞬頭を掠めた病院は吹っ飛び、急いで準備して家を出た頃。
みんな笑顔で、仲良く手を繋いでいた。
じゃれあいながら、世の中の恐怖症をいくつ言えるかで盛り上がる。
「ピーナッツバター恐怖症!!」
「ねぇねぇくぅちゃん。さっきは強く言ってくれてありがとうね。 久しぶりにちゃんと怒れた」
電車の切符を買っている時、すーちゃんに袖を引かれて言われたこと。
そこ、ごめんねじゃないんだ!とか、色々すっ飛ばしてもう、私は完全に負けた。
全力の純粋な感情を目の当たりにして、張り倒されたあとの空は青いな、なんて清々しいんだろうな。
何事も無かったようにじゃれ合うみーとすーを見ていたら、本当は言葉に意味なんてないのかもしれないと思う。
知り合いとか友達にあんな風に怒るの初めて!と言われて、不思議な喜びが湧き上がってくる。
遊園地に着いてからも、あれ乗りたいこれやりたいとキレッキレのすーちゃんは、もう帰らなきゃだし自費でラスト行っといで!と言ってからの交渉術もすごかった。
(小銭増やしたくないから、あと2回でちょうど1000円なのよ。だから1000円分でいい?)
そして、結局帰りの電車でお腹が痛くなったすーちゃん。
「余計なお世話って言ったけど病院行けばよかった」
すごく痛いと言うので夜間の診療所を調べて連れて行くも、
「こんなに帰り遅くなるなら病院行かなきゃ良かったな」
とのこと。
なんて理不尽な!!!!!笑
夕飯はお腹が痛いすーちゃんリクエストで作ったうどん。
何かに夢中で動く気配のないみーちゃんに
「うどん、のびのびしちゃうよ!」
と言ったら
「のびのびって超いいね!めっちゃ楽しそう!」
(お腹が痛いすーちゃんを背負うみーちゃんの図)
出会って5日目のこと、私はあなた達の虜です。