2nd stage

 

さらば北海道、空を飛んだラムピリカ一行。

 

初めましてに次ぐ、はじめまして。

雪のない景色を堪能しながら、夢のような展開にちょっとぼんやりしていた私。

 

「くりちゃんとみーすー、ちょっといい?」

 

迎えに来てくれたご友人の車で自宅へ向かう途中、助手席の千秋さんが痛くない首で振り向いた。

 

あっち向いてホイから身を乗り出すとそれは、

「私はこのまま熱海のお家へ行きたいのだけど、数日3人で過ごしてみませんか?」

という提案。

 

ひとりで行くの!?と一瞬驚いたものの、千秋さんの目に宿る無邪気さ!圧倒的な信頼感に、胸にズドンと大砲を打ち込まれたような気持ちになった。

 

『いいよー!!!!』

 

 

私が出しうる全力のおっけーを。

両手を大きく振り回し、いってらっしゃい!!

 

 

そして始まった湘南、みー&すー&くぅ暮らし。

 

圧倒的に生きる力が弾けてるふたりは、あらゆる事態への対応力がすごい。

若干(いやかなり?)トンチンカンな私は、めちゃんこ助けられる。

 

初めての夜、部屋の中にどうやってみっつの布団を配置しようかなぁとぼんやり立ち尽くしていたとき。

すーちゃん(10歳)が私の脇からサッと進み出る。

 

「すーは布団敷くの上手いから、任せときな」

 

どこかハードボイルドが漂うみーちゃん(12歳)を尻目に、ここをこうしてこうやって…とあっという間にきっちりパズルのように、ベッドメイキングもばっちりに仕上げるすーちゃん。

閃きクリエイターである彼女は時に、今思いついたと言って様々なものを作り出し、椅子とタオルケットを使った即席の小部屋まで製作。

 

すげぇ…!!

 

 

今日は冷えるなぁと暖房について聞くと、あるのはマッチで点火するタイプのストーブ。

おぼつかない手つきでもたもたする私と違い「そのやり方だと折れるよ!」と言ってサッとマッチを擦り部屋を暖められるふたり。

 

そして、折れそうな小枝にもたもたしている様子を「くぅちゃんかわいい」と言われる。

 

照れる…!!

 

 

ある日、「久々学校行こうかなー」と準備を始めたみーちゃん。

(学校へ行くか行かないかは本人の裁量に任されている)

 

友だちに時間割を聞き、受話器を置くと

「明日は東京見学だそうです」

 

お弁当が必要らしく中身は何にしようかなぁと考えていたら、

 

「すーがお弁当つくるね!」

 

ソファーからぴょんと立ち上がり台所へ走るすーちゃん。

(私が嫌いなきゅうり入りのオムライスを作り、なんと美味しく食べられたという逸話を持つ)

しかし冷蔵庫の中、納豆とかキムチとかくさいものばっかりだった気がする。

 

おかず用の買い物してこようかと言うと、みーちゃんがいや、と断った。

 

「弁当は、家にあるもので作るものだよ」

 

 

そうか…そうなのか…!!!

 

 

そして、行楽シートが見当たらず部屋の中をバタバタと走り回るみーとすー。

夕飯のお皿を洗いながら成り行きを見ていると、みーちゃんが思いつく。

 

「そういえばブルーシートがあった!小さく切って使っていいかお母さんに聞いてみよう!!」

 

母のGOで2人は協力して行楽シートを切り出し、くぅちゃん見て!と披露してくれた。

しょっちゅういざこざ喧嘩している彼女達だけど、こういう時のチームワークはピカイチ。

 

 

寝起きにお腹がすいて、みんな朝食がまだなのに炊飯器のご飯を食べ過ぎた私に対して、みーちゃんが一言。

 

「ひとりくらい食いしん坊がいたところで、うちの食卓には何の影響もないさ」

 

 

なんだろうこの子達、と思う。

「できない」や「困った」がちっとも問題にならないこの感じ。

不完全さ、デコボコ加減も包み込んで、真っただ中を爆走するきらきらエネルギー。

 

 

 「誰かに使えて誰かに使えないものも、この世にはある気がする」

 

調子の悪い電子レンジに対するみーちゃんの感想なのだけど、何故だかグッときてしまうマジック。 

 

 

 

現在、ラムピリカに書き置きを残して家出中の私。 

 

自宅じゃないのに家出というのも変な話だけれど。

(みーすー達はおばあちゃんと一緒。たまに電話してくれる)

 

「家出、超いいね!」

何故かみんなに褒められつつ、昨日初めてお会いしたご夫婦のお宅でそのままお泊まり会。

みんなで鍋を食べ、足もみマッサージし合っている謎。

良いことも悪いことも、更なるご縁の大きな波に飲まれている最中。

 

 

 この旅がどこへ向かうのか、未だ全く予測不能

 

 

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カオス、はじめました

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現在、江ノ島近くの喫茶ラムピリカ -※- の子どもたちと暮らしている。


12歳のみーちゃんと10歳のすーちゃん、そして25歳のくぅちゃん(私)。
母である店主の千秋ちゃんは、熱海の病院に入院中のため不在(北海道旅行で全力お尻滑りした結果、名誉の骨折)。


色々と突っ込みどころは満載なのだけど、喫茶ラムピリカは千秋さんの気分(?)による不定期営業のため「幻のカフェって言われてるらしいよ」とすーちゃんが教えてくれた。


今、幻にいるのかぁとしみじみする私。
そして私が彼女達と初めて会ったのは二週間前という、カオス。





物語の始まりは、店主千秋さんのFacebook投稿。


「北海道旅行に行きます、誰か遊びませんか!」

タイムラインに流れてきた、子ども友人みんなで旭川へ雪遊びに行くよというお知らせ。


その時の私と千秋さんはというと、5年ほど前にTwitterで知り合い、最後にメッセージをやり取りしたのは3年前。ごく最近Facebookで繋がったものの、一方的にブログ読んでますくらいの間柄。


当時、住み込みのお手伝いを頓挫してベッドから起き上がるのもやっとなくらいクッタクタに疲れきっていた私。
脳天からビビビッ!!と雷に打たれたような電気が走った。


あ、これ行かなきゃ。


会ったことがない、とか身体のあちこちが痛い、だとかそんなことはまるで関係なく、考えるより先に光の速さでメッセージを送信。


しろくまのように駆け回れます!よろしくお願いします!!」



スキーウェアを用意し、札幌から旭川行きのバスへ飛び乗り、降り立つは初めて尽くしの旭川
駅をうろつく私を即座に見つけた、千秋レンタカー。


そこから、怒涛の北海道編へ突入。




1. 初めましての旭川動物園、狼の檻の前で遠吠えする人間の大人2人(千秋&くり)、すーちゃんに「恥ずかしいからやめて!」と怒られる。


2. 千秋さんの旭川時代を知るご友人宅へ、10年ぶりの感動再会を見届ける。
(謎の同行者にも関わらず快く迎えてくださったご家族。寿司&ピザをご馳走になりつつ赤ちゃんだったみーすー達のアルバムを眺め、当時のお話を聞かせてもらったりご友人夫婦の馴れ初めを質問。最後はみんなで記念撮影!)


3. 子ども用氷の滑り台で千秋さんが全力お尻滑りで負傷、ホテルへ残して他メンバーでワカサギ釣り。
(6人力を合わせて釣り上げた1匹 時価28000円キャンセル料込み)


4. 痛みで歩くのもままならない千秋さんと子どもたちを車に乗せ、免許取得後初めての路上運転。雪道をおだてられつつどきどき若葉マークで爆走。



数日前に初めて会った人達と素っ裸で温泉に浸かりながら思った。


なんだこれは??


その日の宿どころか、いつ帰るかさえ決めずに飛び込んだ私。
全力親子を空港へ送るため、若葉レンタカーを走らせながら心にふつふつと湧き上がる気持ち。


このまま、ラムピリカへ行きたい…!!!



「ねぇねぇ、くぅちゃんこのままうちに遊びに来てよ」
旭川空港のカウンターで、私の心を見透かしたようなみー&すーの言葉。頭の中で鐘が鳴る。


チケットはありますか、恐る恐る聞いてみる。


「通常ですと3万円以上いたしますが…」




……9800円!!




「行きます!!!!」


右手を高らかに、宣言。



ハイ!と挙げた手の勢いそのままに。


なんだこれ??を超えるなんだこれ!!!

待ち受けるエクスプロージョン、湘南ラムピリカへと軽やかに着地した。